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【心不全】SGLT2阻害薬 ジャディアンスとフォシーガの比較



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作成 2022/04/09

 

 

SGLT2阻害薬のフォシーガ(ダパグリフロジン)が心不全の適応を取り、最近ではジャディアンス(エンパグリフロジン)も心不全の適応を取りました!

 

カナグル(カナグリフロジン)も現在臨床試験の最中だそうで、今後SGLT2阻害薬の心不全分野での戦国時代がはじまるのかな?色々楽しみです。

 

さてさて、これらの薬の違いってなんなんだろう?色々調べてみました!

 

 

 

適応

フォシーガ

1型糖尿病

2型糖尿病

慢性腎臓病

慢性心不全(HFrEF)

 

ジャディアンス

2型糖尿病

慢性心不全(HFrEFおよびHFpEF)

 

ジャディアンスの方が適応の種類が少ないですね。一方で、ジャディアンスはHFrEFおよびHFpEFに効果があることが認められています!

 

…ところで、いきなり出てきたHFrEFやHFpEFってなんぞや?という方も多いかと思います。

 

心不全ガイドラインにて「左室駆出率の程度の違い」によってそれぞれの心不全を分類しています。

 

左室駆出率が低下した患者

 →HFrEFは「ヘフレフ」

左室駆出率が維持されている患者

 →HFpEFは「ヘフペプ」

と分類します。これらの間であるHFmrEFなんてのもあります。

 

 

 

で、このジャディアンスがHFpEFに適応を取ったというのがもの凄く画期的なことなんです!

 

ガイドラインを参照するとわかるのですが、2021年に改定されたガイドラインは以下の通りです。


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2021年 JCS/JHFS ガイドライン フォーカスアップデート版 より引用

 

見てわかる通り、今まではHFpEFに対する薬剤が何もなかったんです。なので利尿薬などで対症的に治療する他なかったんです。しかし今回、初めてHFpEF治療薬が認められました!

 

心不全に対する用法用量

フォシーガ

ダパグリフロジンとして10mgを1日1回経口投与

※5mg1日1回では有効性は確認されていない。

 

ジャディアンス

エンパグリフロジンとして10mgを1日1回朝食前or朝食後に経口投与

※10mg1日1回を超える用量の有効性は確認されていない。10mgを上回る有効性を期待して25mgを投与しないこと。

 

フォシーガが「1日1回」なのに対しジャディアンスは「1日1回 朝」の指定があります。この理由としては、SGLT2阻害薬は尿量を増やす効果があるため、夜間の頻尿を回避するためなのだそうです。

 

フォシーガも例外ではないので「朝」服用が推奨なんでしょうね。

 

腎機能に関する注意事項

フォシーガ

eGFR30mL/min/1.73㎡未満あるいは末期腎不全患者を対象とした臨床試験は実施していない。

 

ジャディアンス

eGFR20mL/min/1.73㎡未満の患者又は透析を要する腎機能障害患者を対象とした臨床試験は実施していない。

 

ここだけ見ると、ジャディアンスの方が腎機能障害ある患者にも使えそうな感じはします。でもフォシーガの方は慢性腎臓病の適応があるので、実際はフォシーガの方が腎機能低下患者には良さそうと思ったり。

 

心不全患者に対する心血管死or心不全イベント抑制効果を示した臨床試験

 

フォシーガ

DAPA-EF試験

左室駆出率40%以下の慢性心不全患者に対してダパグリフロジン10mgを標準治療に追加し投与。

 

複合エンドポイントを優位に抑制した(ハザード比:0.74)

 ・心血管死亡、心不全入院、心不全による緊急受診のそれぞれも有意に抑制。

 ・糖尿病の有無は関係なし

 

ジャディアンス

EMPERE-Reduced試験

左室駆出率40%以下の慢性心不全患者に対してエンパグリフロジン10mgを標準治療に追加し投与。

 

心血管死亡または心不全入院の複合エンドポイントを優位に抑制した(ハザード比:0.75)

 ・心血管死亡の抑制効果:有意差を認めず

 ・心不全の入院抑制効果:有意差あり

 ・糖尿病の有無は関係なし

 

これらはそれぞれ左室駆出率40%以下の慢性心不全患者を対象としています。ジャディアンスについては心血管死亡の抑制効果は認められていません。フォシーガ対ではそれが認められているため「フォシーガの方が優れている」と言えそうです……が、そう簡単な話ではありません。

 

象患者群に違いがあるため、単純に比較することができないんですよ!

 

というわけで、ここまでだと、これらはどちらもほぼ同じ効果、と言えそうです。

 

ここまでだと、フォシーガとジャディアンスは似たりよったりの効果なので、好みで選んでもいいんじゃないかと思ってました。

 

なぜ過去形かというとですね!

 

前述した通り、2022年4月6日にジャディアンスが左室駆出率によらず慢性心不全に効果があることが認められたからです!

 

EMPERE-Preserved試験

左室駆出率40%以上の慢性心不全患者に対してエンパグリフロジン10mgを標準治療に追加し投与。(ハザード比:0.79)

 ・心血管死亡の抑制効果:有意差を認めず

 ・心不全の入院抑制効果:有意差あり

 ・糖尿病の有無は関係なし

 

まとめ

色々と比較検討を行ってきました。

 

個人的な見解としては心不全に対してはHFpEFに対して適応のあるジャディアンスが優位!当面は心不全に対するSGLT2阻害薬人気はジャディアンス>フォシーガとなるのではないかと思っています。

 

 

では!

 

参考文献

フォシーガ添付文書

フォシーガ錠5mg/フォシーガ錠10mg

 

ジャディアンス添付文書

https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/3969023F1023_1_14/?view=frame&style=XML&lang=ja

 

月刊誌「薬局」2022年3月 Vol.73 No.3

心不全薬物治療の道しるべ 南山堂

http://www.nanzando.com/journals/yakkyoku/917303.php